インタビュー企画第3回:川崎ヒナ(Pills the Candy Girl,ex.零雛ラボラトリー,ex.海中庭園)
どうも、ふぁずです。インタビュー企画第3回は、今年解散を発表した東方アレンジサークル「零雛ラボラトリー」のリーダー、そしてロックバンド「Pills the Candy Girl」のリーダーでギターボーカル、さらにはボカロPでもある川崎ヒナさんにインタビューしました。音楽の話から、以前バズった愛猫の話まで、様々なお話に答えて頂きました。
それでは、最後までお楽しみください。
ーでは、よろしくお願いします。
よろしくおねがいしますー。
ーさて、最初の質問ですが、ヒナさんの音楽を始めるきっかけやルーツ、出自となったバンドなど、教えてください。
元々は小学三年生でピアノを習い始めたのがルーツ……ではあるんですが、最初にバンドに興味を持ったきっかけはASIAN KUNG-FU GENERATIONの「遥か彼方」を聴いた時です。アニメ「NARUTO」の主題歌だったんですけど、「主人公が全裸の女の子に変身するアニメらしいぞ」って聞いて観始めたらロックに目覚めました(笑)。
それから好きなバンドのメンバーが好きなアーティスト、仲の良いバンドを漁っていたらART-SCHOOL、THE BACK HORN、Syrup16gといった、いわゆる鬱ロックって呼ばれてた音楽に辿り着いて。それが俗にいう厨二病の時期だったっていうのもあってか、一気にのめり込んで、それが今でも自分の音楽の土台になってる感じです。
ーバンドを始めるルーツって人それぞれだとは思うんですが、ヒナさんのきっかけはちょっとレアだと思います(笑)。ただ、それがまたヒナさんらしいというか。
喜んでいいのかな……(笑)
ーそれはもう喜んでいいというか、音楽の可能性を感じますよね(笑)。そういう方向からバンド始めるパターンもあるんだな、と。
さて、次の質問に移りますが、鬱ロック好きということもあり、そして以前ヒナさんとバンドをやっていた時に自分が感じた事でもあるのですが、歌詞には並々ならぬこだわりがあると思います。その辺り、詳しく聞かせていただきたいです
これまで複数のバンドで歌詞を書いてきましたけど、一貫して掲げてるのが「性と死」っていうテーマなんです。さっき挙げたTHE BACK HORNなんかは「生死」を掲げた曲が多かったんですけど、それを自分なりに咀嚼して飲み込んでみたときに、性的な欲求とか欲望って結局生きてることの一部だし、象徴でもあるように思って。そして自分の中で音楽をやるのも生きてることの一部だから、性っていうものと音楽がかなり近い位置づけなんですよね。だからそれが歌詞には色濃く出るんだろうなと思います。
ーなるほど。ちなみに歌詞はどんな時に思い浮かびますか?
基本的に普段は小説や映画、時には現実で起きた出来事、見た夢なんかをモデルにして、更にその「if」のパターンを想像して書くことが多いんですよね。なので「こういう時に」っていうのは特になくて、いきなりふっと脳内に現れるっていうパターンが多いです。
ー自分はあまり作詞をしないし、作詞家は何かをしながら考えるもんだっていうイメージがあったので、少し意外ですね......。では、作詞について聞けた所で、曲作りについてお聞きしたいです。作詞込みでどのような順番で作っていますか?
これもまたパターンが複数あるんですが、一番多いのは「歌詞でこのフレーズ使いたいな」っていう1文が浮かんで、それを適当に口ずさんだのを元に、そこにコードを当てはめて、それから残りの部分を考える……というパターンですね。
バンドで活動するときは他のメンバーが何気なく弾いたものを元に作ることもあるんですけど、それだと前者のパターンと違って歌詞の核になる部分をあとから考えるので、苦労することが多いです。
まとめてしまうと、歌詞であれリフであれ、主題になるものを完成させてしまって肉付けする……という感じですかね。
ーなるほど。あまり一つのやり方にはこだわらず、柔軟に製作を進めていくのですね。
手順を決めてしまうとどうしても手詰まりになってしまうところが出てくるので。割とその場その場でやり方は変わりますね。
ーさて、次の質問に移ります。音楽の話からちょっと逸れるのですが、これはヒナさんにしか出来ない質問というか…せっかくヒナさんにインタビューさせて頂けるならしたいと思ってた質問です。
ヒナさんはツイッターで、以前愛猫のツイートをしたらバズってましたが、あの一件から、自身の活動や私生活等、何か変わったこととかってありましたか?
あれはすごかったな……(笑)。単にフォロワーが物凄く増えたっていうのもあって、正直なところ猫を映り込ませた演奏動画を載せるとか、猫を元に曲を作るとか、色々とあざといやり方を思いつきはしたんですけど、結局やらなかったですね。
何か変わったかなって思い返すと、普段僕はいわゆるサブカル系の人達に好んで貰えるような物を作ろうとしているんですけど、それが本当に出来ているのか不安だったところがあって。あの一件のときに自分の名前を検索していたら、僕の見た目に言及してる人が割といて。「サブカル系バンドマンで猫好きとか最高だな」っていうようなツイートがそこそこ出てきて、「あ、自分の方向性間違ってないな」っていう安心感に繋がったりはしました。
ーすごい羨ましいです(笑)。そして、攻撃的だったり否定的なリプライばかりではなく、そういった好意的だったり支持してくれるようなコメントもあって良かったです。今や界隈でも随一の知名度ですよねえ......。すごい。
自分の名前をGoogleで検索して音楽より猫が出てくるのは不本意ではあるけども(笑)。そこから知ってくれたフォロワーさんが音楽聴いてくれるかっていうと、全然そんなことはないですしね。
ああ、でも同人活動で音楽をしていた時には初対面の人でも「Twitterで観たことあります」って言ってもらえるのは色々と助かりましたね。
ーその辺すごいもやっとしますよね(笑)。「みんなもっと俺の音楽も聴いてくれよ!」って。でも、長い自己紹介をある程度省けるのはいいですね(笑)
ある程度自分を知ってもらえてると仲良くなる為のハードルが下がりますからね。考えてみたら、「猫ばかりじゃなくて曲も聴いてくれ」って思ってるだけじゃなくて、そこで売り込むくらいの意気が必要だったのかもしれない。今って音楽が飽和状態だから、わざわざ自分から聴きに行こうとする人も少ないだろうし。
ー確かに、飽和状態にあると自分も思います。ネット上でいつでも手軽に聴けるようになったり、音楽に関することの利便性が向上したことによって、弊害として、文化としての音楽の重要度って下がったのでは、と思っています。
我々はバンドマンだから、新しい音楽を漁ったりいい音で聴こうとしたりするのって当然のように思いますけど、音楽は結局のところ娯楽の一部ですしね。探さなくても沢山ある物をわざわざ探しにはいかないだろうな、っていう。そういうリスナー側の心理っていうのも理解できるミュージシャンじゃないと、音楽で生きていくのは難しい世の中なんでしょうね。
以前ブログで「鬱ロックが衰退している」っていうことに触れたことがあるんですけど、リスナーの心理を読めるミュージシャンが、そういう音楽の需要が少なくなっていくのを察した結果なんだろうなって思います。
ーなるほど。こう、つくづく時代の流れに一番敏感というか、世の中の流れに左右される文化だと思いますね。世の中のあらゆるものの情勢に結構紐付けされてるというか。その世の中のあらゆることのバロメータになるのがリスナーの気持ちで。
そうですね。中には「そういうのがやりたい訳じゃなかったんだけど……。」っていうミュージシャンもいるんじゃないかな、なんて邪推してしまう(笑)。
ーですよねえ。商業音楽について否定的な事を歌った楽曲も探せばそれなりにあるくらいですからね。
音楽という文化の現状についてお話して頂いた所で、そろそろ次の話題に。ヒナさんは現在音楽活動は実質充電期間のような状態だと思いますが・・・今後の予定は構想など練っていますか?それこそ衰退した鬱ロックやシーンを変えてほしいと思うリスナーもいると思います。
そうですね、充電期間……というと聞こえはいいんですけど、実際はメンバーが欠けていただけで。Pills the Candy Girlのメンバーが再び揃ったので、来年から活動再開になります。しばらくはこっちがメインで。作ったのはいいけどPillsでやる曲じゃないなあって曲が何曲かあるんだけど、それは個人で出すか別のバンドになるか……その辺はほら、心当たりがあると思うんですけど(笑)。同人活動もなくなって割と制作時間は取りやすくなったから、そろそろボカロ曲もまた作りたいなあ……っていう構想は沢山あります。
ーなるほど。心当たりがっつりありますね…こちらがバタバタしてしまって本当に申し訳ないです…...。そうそう、零雛ラボラトリーってもう活動はないんですか?一時期、最後にライブやるかも、という話を聞いたことがあるのですが。
やりたいとは思ってたんですけどね。気が付いたらサポートメンバー含む関係者のほとんどが既婚者になったっていう(笑)。機会に恵まれたらラストに1発できないかな……っていうことは考えてはいたのですが、現実的には難しそうです……。
ーなるほど。やはり雛ラボの活動がないのは残念なのですが、今後ヒナさんの活動がまた活発になるのはファンも嬉しいと思います。
それでは最後に今後の目標と、ファンに向けてメッセージをお願いします!
ファンって程の人いるのかな(笑)。さっき話したように鬱ロックっていうのは衰退が始まっていると思うんですけど、自分も含めてそれを必要としている人は少なからずいると思います。なので僕はそういう人の心の隙間に入り込んでスッと消化されていくような音楽を作りたい。「鬱ロック」って自称するとすごく格好が悪いんですけど、必要としてくれる人達に見つけて貰えるようにあえて自称していきたいと思います。今後もライブをしたり音源を作ったりするので、その時は是非宜しくお願いします。
ーありがとうございます!再始動の日を心待ちにしてます。楽しみです!それでは、素敵なメッセージを頂けた所で、インタビューを〆させていただきます!ありがとうございました!
ありがとうございました!
続いて、ヒナさんの機材を見ていきましょう。
ヒナ's Equipment
まずはギター。このジャズマスターは、北海道・函館にある工房「Aventure Guitars」にてオーダーしたもの。その名も「Venus Blue」。
敬愛するギタリスト戸髙賢史(ART-SCHOOL、 MONOEYES等で活躍中)のメインギターを参考に、センターピックアップを搭載。ピックアップセレクターとは別に設けてあるスイッチで、センターピックアップのみの稼動へと切り替えが可能。そして、スタンダードなジャズマスターとは違い、ビグスビーアームを搭載。
この他に、Tom AndersonのDrop Top Classic Shorty、Seventy SevenのALBATROSS-JAZZ等を所有。ほぼ全てのギターのボディカラーが青い。
続いては、エフェクターボード。
友人の個人ブランド「Mac&Panda」のSymphonia MagicaやTremulus Lune、MaxonのBlubber、G2DのMorpheus Distortion、BOSSのBD-2、KATANA SOUNDの毒蛇、ProvidenceのADC-4、BOSSのDD-20を使用。
続いてラックシステム。
オーディオインターフェースはRolandのOCTA-CAPTURE。他には、TECH21のSansAmp PSA-1.1等。
こちらはパソコン周り。筆者にとって羨ましい機材ばかりなのだが、それよりも二次元アイドルのグッズの多さの方が正直気になる。
機材は以上です。Avanture Guitarsが気になった方はすぐさま検索!
[川崎ヒナ]
北海道・函館市出身。海中庭園、零雛ラボラトリー等、いくつかのバンドでの活動を経て、現在は「Pills the Candy Girl」でリーダー兼ギターボーカルとして活動。そしてボカロPとしても活動している。
ヒナさんのブログ↓
インタビュー内に出てきた鬱ロックについての記事↓
[音源]
零雛ラボラトリー「過ぎ行く季節に醒めた夢」XFD
Pills the Candy Girl「Lost Qualia」
ボカロ曲処女作「マセてる少女の告白」
今回の記事は以上です。来年からのPills the Candy Girl再始動も楽しみですし、ボカロPとしての活動も、「普段の活動とはちょっと違う音楽を作り、違う一面をリスナーに届けたい」との事。期待大!
次回は、「三齢(Elf-Cup 3 Age,Minor Charge)」さんにインタビューします。お楽しみに!
インタビュー・編集:ふぁず